ギャラリー5610では、染繍工房 大羊居(せんしゅうこうぼう たいようきょ)による友禅染の着物を展示しています。「Dear woman 折々のよそおい」と題した本展では、女性が七五三や成人式、婚礼などのハレの日に着る着物の文様をテーマに、およそ二十点を展示しています。

文様には、子供の幸せを願う気持ちや商売繁盛を願ったもの、世相を反映したものなど様々な思いが表現されています。
すくすくまっすぐ育つ植物ということから子供が身につけるものに描かれることが多い「麻」↑や「竹」↓。

長唄のおさらい会用に拵えた「桜」と「橘」の文様は、そのときに唄った「紀州道成寺」にちなんだもので、ストレートに気持ちを表さずに模様に仕立てるといったアイデアは、静物に寓意を込めたヴァニタス画のようです。


中にはとてもユニークな作品もありました。
七歳祝着「お菓子の家」。童話の中で見たお菓子のお家が描かれているという、可愛らしい作品です。

裾をめくると女の子のシルエットの中に「momoko」と、着物の持ち主の名前が入っています。

同じ七歳祝着でも、こちらは先の大戦時の頃の作品です。七歳祝着「陸海空」。『桜は陸、青海波は海、飛行機は空で「陸海空軍」を表しています。「そういう時(戦時)だからこそ、子供の身につけるものはいつでも明るくという思いがみえる」』と説明してくださいました。当時も、飛行機がついた着物は見たことないと非常にめずらしがられたそうです。

このような作品もありました。
「藻刈り船」をえがいたものですが、「もがり」「儲かります」の洒落で、商人の家ならでは模様だそうです。

ジャガード織りを模した表現されたこの斬新なデザインは、ギザギザのラインがひと昔前のコンピューターグラフィックスのようです。
「なんだってキモノになるんだよ」とは、大羊居初代・野口功造さんの言葉だそうですが、古典を深く学び日本人が培ってきた美意識を大切にしながら、自由な発想でその先のあたらしを追い求めていくという、初代より続く大羊居の精神をこの機会にぜひ堪能なさってみてはいかがでしょうか。
●「Dear woman 折々のよそおい」
4月18日(火)~4月23日(日) 11:00AM~6:00PM(最終日~5:00PM)
