ギャラリー5610では「大羊居・大彦60年ぶりの兄弟展」を開催しています。
明治期の大呉服商 大彦・野口彦兵衛(1848–1925)は、西京の染物に対し、江戸人の好尚を酌んだ自己の考案による品を売り出し、ついには世に”大彦染”といわれる模様染色の一天地をつくりあげました。その彦兵衛の二人の息子が、本展でご紹介している野口功造(1888–1964)と眞造(1892-1975)です。
二人は共に偉大な父の影響を受けながらそれぞれの個性で独自の作風のを生み出し、大正から昭和にかけての染色美術界における大きな存在となりました。本展では、二人のオリジナル作品の他、功造が染繍技術を後世に伝えるために制作した「鳳舞桐祝文様百趣」の一部や眞造が江戸小袖を忠実に再現した訪問着なども展示しています。
「鳳舞桐祝文様百趣」の起源は、昭和16年、野口功造が戦争によって我が国の尊い伝統に培われ蓄積された染繍芸術とその技術が失われることを憂慮し自己研錯のため、また将来の資料として残す意味からも「寿桃百趣」と題し一図百染することを思い立ったことにはじまります。(一図百染とは一図柄に対し染繍上のあらゆる技法を百通りに網羅表現すること)
「海底美観」と題された海底を友禅・刺繍・糊・箔の美で表現した作品(野口眞造作)。
魚を描いた作品は香淳皇后のためにも制作されたが、海洋生物を研究されている昭和天皇より描かれている魚のひれの数が違うとのご指摘を受け、ひれの数をなおして納めたという逸話もあるそうです。
染色や刺繍の美を隅々まで衣装の上に表現している野口兄弟が確立した”染めによる美術”をぜひご覧ください。
□東京のキモノ「大洋居・大彦60年ぶりの兄弟展」
9月3日(木)〜8日(火)
11:00~18:00 (最終日17:00まで)
入場無料