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2011年 07月 10日
暑中お見舞い申し上げます。
毎日暑い日が続いておりますがみなさまお元気でしょうか。 去る6月26日(日)、ギャラリートークが行われました。 ドリルデザイン(林裕輔さん・安西葉子さん)とアオイ・フーバーさんの出会いから、Room展開催にいたるまでのいきさつなど、進行役に双方をよくご存知の萩原修さんをお迎えしてお話しいただきました。その時の様子をほんの一部ですがご紹介いたします。(以下敬称略/出演者の許可をいただいて掲載しております) <片思いじゃないです> 萩原修さん_以下萩原 ドリルデザインとアオイ・フーバーさんが出会ったのは、去年の12月。 まだ半年に満たないくらい? ちょうど半年ですか。 恋愛でいうと一番良い時期という感じで(笑)。 さっきも控え室で打合せをしたんですけれども、僕も照れるくらいに、アオイさんはドリルデザインのことをかっている。 で、ドリルデザインはアオイさんのことをすごく好きである(笑)。 ちょっと僕はあんまりいない方がいいのかな(笑)って感じなんですけど、 一応進行役ってことで、アオイ・フーバーさんのことと、ドリルデザインのことを両方知っている立場ですので。 まず、なんで僕がいるのかということをご説明すると、アオイさんとは、オゾン(新宿リビングデザインセンターOZONE)で1998年3月12日から3月24日にやったアオイさんの展覧会があったのですが、僕はその展覧会の担当でした。それからもう10、2、3年前になってしまっていて。(なぜアオイさんの展覧会をやることになったかというと)それもまたややこしいいのですが、建築家の中村好文さんが、アオイさんの南スイスのご自宅に行っていて、こういう人がいるからぜひオゾンでやれと指令を受けて(笑)。 ちょうどカスティリオーニさんの展覧会を(オゾンの)下のホールでやっていて、同時期にいろんな人とくっついて説明しにくいんですけれど、それが実現して知り合ったわけです。久しぶりですよね、この間お会いしてから、3,4年ぶりくらいですね。 で、ドリルデザインとはまた全然別のところで、といってもオゾンがらみなんですけど、1999年に自分の家をオゾンから持ち帰って建てた時(増沢洵設計の「最小限住居」の骨組み)に、2人はまだ学生で、デッキやデスクをつくったりするのに手伝いにきてくれたんですね。それで知り合ってからの縁ですので、アオイさんより後に知り合いました。こういうかたちで、アオイさんとドリルデザインが出会ったというのも不思議な感じで、どう考えていっていいのかわからない(笑)。 この展覧会は僕は全く関わっていないので、前回来た時に少し経緯をお聞きしたのですが、まだわからないとことがいっぱいあって、、。 今日は良い機会ですので、みなさんと一緒にどうしてドリルデザインとアオイさんが一緒にやっていて、何をやろうとしているのか? 実はこれは最初の試みで、この先があるそうなんです。あくまでもスタート地点という事らしいので、そのへんのあたりまでお話をきければいいなと思います。 こういう形にしたのは、堅苦しい感じがいやなのでこうしたのですが、やっぱり緊張しますね(笑) <なぜドリルデザインと?> ドリルデザイン林さん_以下林 アオイさんをドリルデザインがどこで初めて知ったのは、オゾンの展覧会で「子供と遊ぶOZONEの夏休み」の時で、知育玩具、おもちゃの展覧会だったのです。その時に葵さんのネフのアニマルパズルとアウラのアクリルのキューブでした。 僕は、ネフ(スイスNeaf社)という会社をそれまでも知っていて、大好きだったんですが、まさか、日本人がネフでデザインをしているとのを全然知らなくて、それですごく「アオイ・フーバー」さんというお名前が印象に残りました。 ドリルデザイン安西さん_以下安西 マックス・フーバーさんのことも知らない、まだ駆け出しの頃で、「アオイ・フーバー」という名前からお名前は日本人だけど、名字が「フーバー」さんなので、すごく印象に残りました。 それから、もともと私達はプロダクトデザインがメインですので、カスティリオーニさんが大好きで、すごく尊敬しているんですけどれども、そのカスティリオーニさんのグラフィックの仕事を葵さんの旦那さんであるマックス・フーバーさんがなさっていて、そこで、「アオイさん」と「マックス・フーバーさん」と「カスティリオーニさん」が私達の中でつながって、そのような感じで、アオイさんのおもちゃ以外の作品を具体的に知っていたわけではないのですが、すごく頭の中に残っています。 林 僕も学生のころに、オゾンでやったカスティリオーニさんの展覧会を見に行ったのですが、その時のカーペットを実はアオイさんがデザインされていたとか、後からそういうことがどんどんわかってきて、、。 それと、僕はブルーノ・ムナーリさんも大好きで、アオイさんはムナーリさんともお友達で、一緒に仕事をしたりして、、、すごいですよね。 萩原 アオイさんの周りには、優秀なといいますか、すごいデザイナーしかいないという状況の中で(笑)。もともと小さい時からお父さんの河野鷹思さんの周りにも色々なデザイナーの方がいらして、なおかつ、あちらへいらしても、すごい方達にお会いになって普通に接してお仕事をしておられる。アオイさんの方にお聞きしたいのは、色々すばらしいデザイナーが周りにいながら、ドリルデザインのどういうところが気に入っているのでしょうか? 安西 怖い(笑) アオイフーバーさん_以下アオイ ちょっとお父さんみたいですね(笑) この額(ペーパーウッド)が、ワタリ画廊(ワタリウム)のオンサンデーズに日曜日に行った時に、売っていたんですよ。 <偶然の出会い> 萩原 えーと、去年の12月26日の日曜日ですね。 アオイ そうです。それはどうしてかっていうと、あのカレンダー(coccodrillino/ワニ)を売っていただいていたので、どのように扱われているのか、ちょっと見にいったんです。そこで、オブジェが売っていまして。とにかく1つ欲しいので買ったんですよね。そして草野さん(オンサンデーズの方)とお話していたら、そこへ彼女(安西さん)が偶然に、、。 萩原 偶然に?! 安西 偶然に(笑)。 ちょうどその年の秋に、ペーパーウッドの展覧会をオンサンデーズでやらせていただいて、アオイさんがいらっしゃった時にはもう終わってしまっていて、フレームとかがちょっと残っているだけだったんですけれど。 まあ、年末だったので、ご挨拶しに行こうかなー。と思っていったら、ちょうど、アオイさんがいらして。 私ははじめ気が付かなかったんですけども、草野さんから「今ちょうどペーパーウッドをお買い上げいただいた方が、有名な方なのでご紹介しますよといっていただいて。」それで紹介していただいたんです。 さっき、林が話したように、パズルとかでお名前は存じ上げていたので、すごく感激して、そこで連絡先ぐらいを交換して、、。 ペーパーウッドの素材にアオイさんはとても興味をもたれていたので、私としては一緒にものづくりをしたいなあと思いましたので、「ぜひなにか一緒にやりましょう!」とお話させていただいたんです。 萩原 その時林さんは? 林さん ぼくはその時はいなくて。 安西もその日、オンサンデーズに年末に挨拶に行くのかどうかをすごく迷っていて(笑)。 どうしようかなー、行こうかなーどうしようかなーっと(笑)。 お世話になったから、行ってきちんと挨拶をしてきたほうがいいと言ったんです。 安西 僕のおかげだといってます(笑)。 会場(笑) 萩原 ペーパーウッドのどこが気に入っいったのでしょうか。 アオイ 額は私にとっていつも、、ほら、ねっ、額というのは大事でしょ。 萩原 それは展覧会か何かで? アオイ ちょうどスイスで、4月1日にやるのにこれはすごくいいと。 萩原 4月1日にスイスでご自分の展覧会をなさったんですね。 <ペーパーウッドのフレーム> アオイ その時の展覧会のタイトルは、イタリア語で「Anche cornice」。 英語でいうと「Also frame」。「額もまた」という展覧会ですね。 萩原 それはこの額に出会ったから、そういうタイトルになったんですね。 アオイ そうですね。 萩原 普通は、展覧会の時の額というのは、どうやって選ばれるのですか。 アオイ 大体、白とか、木とか、まー作品によりますけど、私の絵は、額がものすごく難しい、、。 本当は、額無しのほうがいいと思うのですよ。でもそうはいかないでしょ。 萩原 額は、ないほうがいい? それは、グラフィック的なものだからということからですか、いわゆる絵じゃないからですか。 アオイ 作品の一部だからです。 萩原 作品の一部だから安易にできないし、額と絵がまざっちゃうのもいやだしということですか。 アオイ あんまり、ね、関係のない額では困るし、、。 萩原 ちょうどよかったんですね。 見ていただけると不思議なんですけど、フレームに色がついているので、絵を邪魔しそうにフレームだけの時は思ったのですが、こうして見てみると、アオイさんの絵には非常になじんでいる感じがありますね。 安西 多分、愛称の良い、悪いを選ぶフレームだとは思うんですけども。 萩原 でもオンサンデーズでやっていたときに、他にフレームを買われた方はいらしたんですか。 林 そうですね、絵のフレームというよりかは、フォトフレームとして売っていたので、イラストレーションの作品をなかにいれることはそんなに考えていなかったんです。その時は。 萩原 じゃーアオイさんが初めてそういうかたちで、自分の絵をかざる額として、ある意味直感的に選ばれたわけですね。 アオイ それで、彼女から名刺をいただいたので、すぐにスタジオにお邪魔したんです。 安西 年明けて、恵比寿のスタジオに1月6日とか、すごく早い時期に、ただただ伺いますというだけで(笑)。 こちらはアオイさんとお話ができるのであれば嬉しいし、ぜひいらしてくださいという感じだったんですけれど(笑) アオイ そしたら、この(ペーパーウッドの)テーブルでスタジオでお仕事されていたんです。 安西 せっかくきていただいたので、私達の仕事をすこし見ていただいたんです。萩原さんとやっているつくし文具店とか、地球儀とか。 アオイ 地球儀は知っていて、実はスイスのフォンデーション(M.A.X.museo)に置きたいと思っていたんです。でもだれがデザインしたかは知らなくて。 <ギャラリーがあります> 安西 そして、6日にいらっしゃった時に「ギャラリーがあります」とアオイさんがおっしゃって(笑) アオイさんはわりと主語が抜けるので(笑) 「ギャラリーはどこに?」「アオヤマに」という感じで(笑) 萩原 ギャラリーって、ここ? ドリルはここを知らなかったんですね。 林・安西 はい 萩原 本当は額の注文のためにいらっしゃたんですよね。 安西 アオイさん、ほとんど額の話はされなかった(笑)。 萩原 じゃーそのときに、展覧会をやろうという話になったんですね。 アオイ そうです。何かやろうと。 それで、お二人はギャラリーをご存知なかったので、次の日にすぐにいらしていただいたんです。 萩原 アオイさん自身も、仕事なり、新しいものを紹介する展覧会をやろうという気持ちがあって、ドリルデザインとならいいんじゃないかと思われたんですね。 アオイ だって古い物を並べてもね。 なにか日本でつくったものがあったら、すごくいいなーと、単純に思っていたんです。 ドリルデザインとなら、(ギャラリーの)広さといい、一緒にやるにはちょうどいいなあと。 萩原 その時はまだどういう展覧会にしようかということは決めてなかったんですね。 アオイ 決めていませんでした。 萩原 やることは決まってたんですね。 アオイ だって、ほら(ギャラリーを)予約しないとね(笑) <座れる椅子を作りたい> 萩原 この展覧会がスタートで、これからどこへ行こうとしているのか? 先ほど葵さんにおききしてたら「ドリルデザインがどこへ行こうとしているのか、私にはわかっている」と(笑)。 僕にはわかっていないのですが、アオイさんにはどうもわかっているみたいで(笑)。その辺のことを聞いてもいいですか? アオイ やっぱりドリルデザインは、生活をすごく大事に考えている若い人たちだと思います。 萩原 本当ですか?(笑) 安西 すごく嬉しいです。でもちゃんと出来ているかどうか、、、(笑)。 ミラノサローネの後に葵さんのお家(南スイス)へ行ったんですけれど、葵さんがその時におっしゃった印象的な言葉は、「今年も座れない椅子があったりしましたか?」と。「痛そうな椅子」とか(笑)。そういう意味でいえば「座れる椅子」を作りたいなと思っています。 萩原 なるほど。この椅子もドリルデザインの椅子ですか。 安西 そうです。私達が座っている椅子も最近発売された「ビートルチェア」という最新作です。 萩原 アオイさんのいわれる生活を大事に考えているということからいうと、ドリルデザインは椅子のデザインをどういうようなスタンスで考えていますか。 安西 ドリルデザインは事務所をはじめて10年以上経つんですけれども、もともと椅子のデザインがやりたいと思っていたのですが、なかなかきっかけというか、すごく難しいじゃないですか、椅子のデザインって。 アオイ 椅子が一番難しい。 萩原 難しいですね。 安西 やり尽くされたジャンルでもあるし、それでもやっぱり新しいことをしていきたいと思うけれど、座れない椅子では駄目だし、なかなか、、まだ経験が足りないという意味でも10年くらい作ってこなかったんですね。それまで、何をやってきたかというと、もうすこしスケールの小さい、それこそ生活に近いプロダクト、生活用品みないなものをデザインしてきました。で、10年目を昨年迎えたんですけれど、それがきっかけにということではないのですが、いろいろなタイミングもあって、家具を少しやってみようかと、、。グッドデザイン、、やってみようか。とかね。ミラノサローネに出すから家具をちょっとやってみようかとか。そういうのを佐藤さん(フルスイング)とやってきて、ドリルデザインでデザインしたものを、彼らがさらに良い形で試作をつくってくれるというパートナーができたというのがすごく大きいです。 萩原 今回は、ペーパーウッドのスツールがあったり、木馬があったり、棚があったり。 ベンチなんかもペーパーウッドなんですけど、ペーパーウッドをつかった家具というのも、今回、かなり新しい試みですね。オンサンデーズでやったのとはかなり違った展開ですね。 安西 オンサンデーズでやったときは、コンパクトなスペースだったので、小さいものとかおもちゃとかが多かったのですが、今回はタイトルが「Room」でしたので、空間を作りたい。お部屋というか、もっと生活感を出した展覧会にしたかったんです。 <アオイさんのお部屋> 萩原 タイトルが「Room」になったのは? 林 4月にサローネにいった後に、アオイさんのお宅へ伺ったんです。 その時に完全にノックアウトされました(笑) アオイさんのお家のすべての部屋がすばらしくて、バランスだとか置いてあるものだとか、普通にただ家具を集めただけでは到底実現できないような、計算された空間というか、、。 あれはちょっとびっくりしたというか、感動してしまって(笑)。幸せな雰囲気の部屋なんですね。 それはモダンデザインの削ぎ落とされたシンプルな方向とはちょっと違っていて、置いてある物はモダンなんですけど、暖かい感じがする。 安西 よく建築家の方の竣工写真なんかで、何も無くてきれいな感じのお部屋がありますが、置いてある家具はカスティリオーニさんなんかのモダンな家具なんだけれど、、。要素はそうなんですけれど、暖かさがあって、なんで暖かさが出ているかは、まだよくわからないんですけどね。 萩原 それはべつにアオイさんとしては、意識されてるわけではないですよね。 モノを選ぶときというのは、直感的に「これは良い」と選ばれているんですか。 アオイ これとこれ、どっちがいいか?で、「こっち」という感じ。 好みかな、、。好みだけではいけないでしょうけど。 萩原 それくらいの感じで自然に合っている(笑)。意識して何かを作っているわけではないのですね。 安西 アオイさんならではの美意識で作られた空間だとは思います。 <Room展がスタートライン> 萩原 でも、そこから「Room」というタイトルになったのですね。 林 なんかそういう幸せな雰囲気の空間をつくっていきたいという思いからですね。 アオイさんと一緒だったら、、。 アオイさんのイラストレーション、そういうものと一緒にできるのであれば、ちょっとは近づけるかもしれないと。 萩原 アオイさんはドリルデザインとは違和感なくできましたか? アオイ 私としてはわりと問題はなかったです。 萩原 今後につながりそうですか。日本でもいろいろなことをやっていくタイミングだったとか。 アオイ 地震のこともあるし、若い人に考えてもらってがんばってもらわないと。 安西 今もいろいろあれしよう、これしよう、と計画中なんですけど。 アオイ 木とか、紙とか、布とかね、、 安西 いろんな素材でドリルデザインはものづくりをしているので、そういったメーカーさんと葵さんのコラボレーションも面白いかなと。 萩原 ドリルデザインだけじゃなく、他のデザイナーともコラボレーションしていきたい感じですか。 アオイ もちろん。今回は良いきっかけだったと思います。 photo : tomonori ohata / ayumi shinohara(DRILL DESIGN)
by gallery5610
| 2011-07-10 16:03
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